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現在の年金制度はどうしてデフレに弱いのか、どのような対策が必要か?

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Northern Ireland politicians
Northern Ireland politicians / SarahElizabethC.

 

日本経済を覆うデフレの影響力

日本経済はバブル崩壊後から、長らくデフレーション、物価や賃金が下がるデフレという傾向が続いています。1990年代後半から今まで、物価が上昇をしたのは、わずかに数回、数えられる程度しかありません。

また、同様にその期間で賃金が上昇に転じたのもわずかな回数です。驚くべきは、サラリーマンの平均年収ですが1997年で約470万円だったものが、現在は約400万円ちょうどくらいです。10数年で1割以上給料が落ちているわけです。多くのものが進化して、生活はどんどん便利になっているように思いますが、この数字は日本が経済的に苦しんでいることを象徴しています。

デフレによる年金制度への悪影響

このようにデフレが続くことで、懸念されるのは年金制度です。現在の年金制度の仕組み(賦課制度)は、デフレに弱いのです。この原因をつくりだしてしまったのが、2004年の改革でした。この改革では、少子高齢化を見越して、今後は徐々に高齢者が受け取る年金を徐々に少なくしていくことが決まりました。実際に、受給年齢(年金を受け取り始める年齢)の繰上げはドンドン進んでいます。

しかしながら、この仕組で問題であったのは、前提に「今後物価が上がり、賃金も上がる」という仮定を置いていたことです。当時からこの点は懸念を持たれていましたが、先ほど指摘をしたように、実際にはこのいずれもが下がり続けています。

完全に2004年度時での想定は外れているわけですが、このような場合にどうなるかというと、デフレの時にはこの仕組は働かず、厚生年金の受取水準(現役世代の賃金に対する年金額の比率)は逆に上がることになってしまいます。

その上がり幅は、なんと2031年には72%にまで上昇すると試算をされています。本来であれば、もっと年金受取額を引き下げなければ年金財政はもたないと言われているのに、これでは全く逆の状態になってしまっています。実際に、2009年には、民主党の要求により、今後デフレが続いた場合に、年金財政がどうなるかという試算も出されています。それによると、なんと、2031年には厚生年金の積立金が枯渇するという、驚くべき結果が出されています。

 

マクロ経済スライドに年金支給額のカット

上記のようにお年寄りが受け取る年金水準を徐々に下げていく仕組みがあるのですが、現状はうまく機能していません。この制度は「マクロ経済スライド」と呼ばれるものです。マクロ経済スライドの目的はこのように、年金額をカットすることで、年金財政を健全化することです。高齢者に支払うお金を節約するできるわけですから、当然年金財政には好材料なわけです。しかしながら、上述したように、デフレによって、この制度が機能不全に陥っていることが問題の発端なのです。

インフレの場合の財政への影響

事前に知っておきたい知識として、デフレの反対であるインフレの場合には、年金財政にどのような影響があるかという点です。これは単純に、賃金や物価が上がれば、それに合わせて年金額も上がるようになっています。デフレと逆なわけです。これは個人年金保険などにはない、公的年金の大きな魅力のひとつです。

そうした時に、例えばインフレである年の賃金が3%上昇した場合ですが、公的年金の制度としては、「賃金スライド」というものが適用され、年金額も3%上がるはずなのですが、これが「マクロ経済スライド」の影響によって、0.9%下がり、2.1%になってしまうのです。マクロ経済スライドによって、年金額は下がるので、高齢者1人ひとりは損をすることになります。このように、デフレであることは、お年寄りの年金にダイレクトに影響をあたえるわけです。また、インフレになったとしても、お年寄りは損をすることになってしまっているのが、今の制度なのです。

 

マクロ経済スライドの失敗

しかしながら、先程も書きましたように、現実には2004年から2011年までマクロ経済スライドが実施されることはありませんでした。これは、年金額がダイレクトに下がることで、高齢者の不満・不安が高まることを懸念した当時の自民公明政権が、賃金や物価が横ばいか下がった時には、マクロ経済スライドを行わないことを決めていたからです。

この結果として、何が起こったかというと、現役世代の賃金が下がっているのに、お年寄りの年金は高止まりしたままになることで、下がるはずだった厚生年金の受取水準(現役世代の賃金に対する年金額の比率)の上昇ということです。2004年の59.3%から2009年には62.3%にまで上昇をしています。このままデフレが続けば、先に述べたように2031年には積立金が枯渇するというのもありえない話ではなかったはずです。また、このことによって、現役世代からすれば、お年寄りを支えるためのお金がドンドン増え、自身の生活が苦しくなっているように感じるはずです。

改革の必要性

この状況を打ち破るのに必要なのは、まず単純にデフレ経済から脱却をすることです。さらに経済を安定させて、賃金が上がる状況を作り出すことです。また、デフレに弱い年金制度の仕組み自体を見直すという考え方もあるかもしれません。さらに、この状況を招いているマクロ経済スライドの制度を変更することもありえるでしょう。いずれにせよ、お年寄りにとってはマイナスの要素が強いことで、簡単なことではありませんが、それでも非常に重要な対策ではあります。

 

アベノミクスによって何が変わるか?

そんな中、2013年、アベノミクスにより株価が上昇し、デフレ脱却も叫ばれています。もし、これにより、日本がデフレを脱却し、消費者物価指数が安定的に上昇することになれば、それは年金財政にとって大きな好材料となります。これまで、全くといっていいほど機能してこなかった、マクロ経済スライドが機能するためです。

インフレになれば、マクロ経済スライド自体は高い効果を発揮する可能性があります。簡単に言えば、政府が国民に負う年金債務を実質的に削減していくことになるからです。最近、株価は乱高下を続けており、どのようになるかはまだわかりませんが、もしインフレが起きるようであれば、年金財政にとって大きなプラスになる可能性はあります。今後もニュースを注視する必要が有るのではないかと思っています。

お読みいただきありがとうございました。

 

年金の制度や仕組みについて、他にも参考になる記事です。デフレとは違った視点で、年金について紹介していますので、きっとより理解が深まるのではないかと思います。ぜひぜひご覧ください(^^)

 

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